今年のDesign Reviewは司会という立場で参加しましたが、2日目の決勝戦では予期せぬ展開となり、この議論は一体どこに向かうのか。司会を忘れてしまうほど議論がめまぐるしく変わっていく状況を拝見しながら、私自身も楽しく参加させていただきました。近年では最も白熱した議論が展開されたと思います。これもひとえに5名のクリティークの方々が学生と真剣に向き合っていただいた成果であり、クリティークを務めていただきました秋吉浩気さん、塩崎太伸さん、長坂常さん、野口理沙子さん、藤村龍至さんに、改めて心から感謝申し上げます。
非常に限られた時間で作品を読み込む眼力と洞察力は、さすが第一線で活躍されているだけあり、学生たちもその凄みを感じた事でしょう。楽屋の控室で藤村さんが、何かメモ書きされているのを横目で見ていました。まさかあの短時間で決勝戦に残った作品を分類化し、批評を湧き起こすネタ帳を作っていたとは。なんとも司会泣かせの恐ろしい人です。それに負けず劣らず秋吉さんが建築教育への批評まで論じた時点で、もうコントロール不能な状況に陥ってしまいました。さらに塩崎さんがその議論に拍車をかけ、野口さんは終始マイペースを貫き、長坂さんは何事にも動じず。といった状態で繰り広げられた最後の討論は、会場の誰しもが息をのむような空気感が漂っていました。この5名を人選した学生実行委員会に称賛を贈りたいと思います。
1日目のクリティーク全員へのポスタ―セッションを終え、その後の懇親会で学生たちがクリティークを捕まえ、作品の批評に耳を傾けている健気な姿を見て胸が熱くなりました。君たちのその情熱がこれからの建築界の未来を切り開いてくれると確信しています。ここで過ごした2日間の体験を糧に、これからもその情熱を持ち続けてください。
そしていつか、今度はクリティークとしてDesign Reviewに帰って来てくれる事を楽しみにしています。