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秋吉さま講評|デザインレビュー2024

前年の2023年に「赤レンガ」、更に前年の2022年に「せんだい」の審査員を務めた関係で、全国区の卒業設計の審査に3年連続で関わったことになります。2023年は緑一色の環境系の提案が多く、2022年は社会課題に挑む提案が多く見受けられました。

2024年の今年はというと、それぞれが生き生きとした視点で世界観を語っている提案が多かったように思います。社会課題から地球環境へと主語が肥大化していった2年間を経て、今年は「私」から始まる個人の世界観へと回帰してきたように思います。

そんな背景もあって8選の選出においては、外発的動機軸(社会/地球軸)から4作品(070、132、218、329)、内発的動機軸(私軸)から4作品(158、272、276、295)づつを選びました。前者は今すぐにでも社会実装ができそうなくらい地に足のついた洞察・検証がなされており、後者は今すぐにでも作家として創作活動を行えそうな優れた表現力・信頼感がありました。

特段感銘を受けたのが70番の谷さんの作品です。水問題という昨今のスタートアップ業界が血眼に研究開発に勤しんでいる中、①建築的提案による解法と②それによって生まれる美しい風景の提示、更にその風景に連動した③人類の新しい生活様式までを描いている点にいたく感心しました。

最終の質疑で「“自分が”社会実装します」と言い切れなかったのが勝敗を決定づける要因になりましたが、これから実践を積み重ねていけば自信や覚悟は次第に備わってくるものだと思います。これから始まる大学院での展開に期待しています。

今後卒業設計に取り組む方々に向けて伝えたいのは、社会性か私性かという二項対立に囚われないで欲しいということです。例えば目先の興味感心を無邪気に探索しているうちに、気づいたら社会を変えうる可能性を発見してしまった。あるいは、気になる社会課題に向き合い無我夢中で試行錯誤しているうちに、気づいたら新しいデザイン領域を開拓してしまっていた。そんな風に、ピュアに物事を探究していれば「社会性と私性」は自ずと繋がってくるものだと思っています。

だから無理に社会課題を捏造したり、先達に習って小手先の手法をでっちあげないでください。何が評価されるのか気になるだろうけど、大事なのは自分自身と向き合うことです。そういう意味でも、他人からの評価なんて本当はどうでも良くて、自分が思うようにやり切れたか、その先にまだまだ探究すべき道が拓けたかということの方が、この先よっぽど重要です。だから審査員というのは、もっと先の可能性に導く役目(メンター)だと思っているので、厳しく鋭い問いを投げ続けた訳なのでした(怖がらせてたらごめんなさい)。

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