選出理由
講評で述べた「社会性と私性」の話に繋げるとすれば、先本くんの場合は私性が先立っていたように思います。物理シミュレーションを活用したデジタル表現の探索から始まり(もっと深掘りしても良かったと思う)、最終的には見事に社会課題(砂防ダムの再生)に接続していました。これはコンピュテーショナルデザインをいかにして建築設計に応用するのかという難題に挑みつつ、いかにして自然と調和したダムを構築するのかという難題に同時に挑んだともいえます。計画の蓋然性を裏付ける環境シミュレーションなどの評価が不足していたという及第点はあるものの、この独自の空間言語を構築した優れた実装力とその可能性を高く評価したいと思います。