選出理由
野口賞の「133イキモノタテモノ」は多大な並列計算を可能にする量子コンピュータを使って、建築そのものを生態系に抱き込むというビジョンを描いた提案です。 イメージした建築を着地させるため、“見たことのあるもの”と“ないもの”を親密に関係するように調整し、混然一体となった模型はとても説得力がありました。 グリッドシステムに則った空間の隙間からは、ほどよい密度感で有機的な空間が差し込まれ、どちらも透明な素材によってヒエラルキーが付かないように調整されています。また柱とも配線ともとれる枝分かれした構造体は、色も素材も街路樹に擬態して、何者か分からないのに周辺から違和感なく立ち上がっています。 テクノロジーとアナログ、人工物と自然といった相反する概念を、間をとりもつ色やスケール、かたちといった共通項を与えながら、建築として調和させていく。そんな寓話性の塊のような立ち現れ方に魅力を感じました。